今回はChild-Dream様による「人形の傷跡」のレビューや感想を紹介していきます。このゲームはミステリー・サスペンス要素のあるADVゲームです。
●ミステリーやサスペンス要素のあるノベルゲームが好きな人
●このゲームの評価や人ストーリーの考察を知りたい人
●「人形の傷跡」の原作版とリメイク版の違いを知りたい人
ちなみにChild-Dream様が制作されている「ANGEL WHISPER」というADVゲームも大変おすすめです。
「ANGEL WHISPER」の感想・レビューはこちら
※この記事はゲームのネタバレを含みますのでご注意下さい。
「人形の傷跡」あらすじ
主人公の「上条明日美」は東京の大学院に通う姉からの連絡が途絶えたことをきっかけに、姉の様子を確かめるため上京する。しかし大学院の「神子塚研究室」には姉が所属していた痕跡はなく、「そんな人はいない」と言われてしまう。さらに姉の住んでいるアパートには生活感が全く無かった。突然失踪した姉の謎を解明するため、明日美は研究室に聞き込みを進めるうちに事件に巻き込まれてしまう…。
「人形の傷跡」は何でプレイできる?
このゲームは1998年にスマホアプリとして制作されましたが、2022年にリメイク版が発売されSteam・Switchでのプレイが可能となりました。
Steam版
Switch版
ゲームの特徴・評価
神子塚研究室で情報を収集し、失踪した姉の真相を探るゲーム
・ゲームのプレイ時間は2~3時間
・最終的なエンディングは1種類だが、バッドエンドが複数ある。(選ぶ選択肢によってGame Overになる)
・リメイク版ではGame Over後に少し前の場面からやり直せる・バッドエンド後に攻略のヒントが出るなどゲームを進めやすい機能が追加されている。
・リメイク版ではキャラクター等のグラフィックが刷新されており、サブキャラ視点のアナザーストーリーが追加されており、物語の理解をより深めやすい。
物語の理解をより深めるアナザーストーリー
リメイク版では主人公である明日美以外の登場人物たちの視点で描かれたアナザーストーリーが追加されており、本編ではわからなかった彼らの過去・悩み・葛藤・決意などを知ることができます。多くのキャラクターの想いがこの物語には関わっていたことや、明日美がどれほど研究室の学生たちに助けられていたのかを改めて実感することができ、思わず彼らに思いを馳せてしまいます。
ただ、明日美とオリジナルの上条明日美との関係性について描かれた後半の追加ストーリーは本編との関連性少し薄いように感じました。
便利なやり直し機能やバッドエンド後のヒントシステム
リメイク版ではGameOver後にどの行動がNGだったのかをヒントとして記載してくれる機能があったり、GameOver後は手動セーブをしていなくても少し前の場面からやり直しが可能で、原作版より攻略が進めやすくなっています。また、ホラー要素のON/OFF機能があり苦手な人でも比較的楽しめる仕様です。
「人形の傷跡」ストーリーの見どころ
主人公の明日美が失踪した姉を探すうちに奇妙な謎に巻き込まれて命まで狙われるようになるという事件の先に、神子塚研究室による人間のクローン製造と利用という非常にセンシティブな内容が明らかになるゲームでした。さらに明日美自身も「かつて神子塚研究室の学生であった上条明日美」のクローンであり、神子塚研究室の闇を暴くための人形として架空の記憶を埋め込まれていました。
ですがテーマや出生に関する内容の重さに反して、明日美の生き様は暗くありません。「上条明日美」としてたくましく生きることを選んだ彼女の成長と選択がストーリーの一番の見どころです。
佳織という姉の存在
今まで辛いことがあっても乗り越えることができ、自身の出生を知っても絶望することなく「上条明日美」という一人の人間として真っ直ぐ生きていこうと思えたのは、「佳織」の存在が大きかったと言えるでしょう。佳織は明日美を利用する勢力側の人間でありながらも明日美のことを気にかけ、血の繋がりはなくても実の妹として心の支えにしていました。明日美に埋め込む偽物の記憶を優しいものにしたこと・ぬいぐるみを手作りしてプレゼントしたことからは、明日美をただのクローンではなく「人格や意思を持った一人の人間として幸せになって欲しい」存在だと感じていたことがわかります。
明日美の強さはこの佳織の優しさから来るものだったということ、そして明日美を心から気にかけ続けた佳織の気持ちに感動してしまいました。2人が一緒に暮らし、本当の姉妹のように過ごす未来があって欲しかったと願ってしまうようなストーリーです。
神子塚研究室の学生たち
神子塚研究室で行われている悪事を暴き、世の中の役に立つための研究を日々必死で行っていた学生たちの研究成果を無駄にしないために明日美が命を狙われながらも戦うことができたのは、研究室の学生たちのおかげでした。明日美が研究室にやってきたことをきっかけに悪事を知った者や、元から悪事を知っていたにもかかわらず「オリジナルの上条明日美が過去に行おうとした告発」を助けられなかったことをずっと後悔していた者たちが、自分の命を落としてまで明日美の告発と命を必死に助けようとしてくれた強い決意が非常に伝わります。
おわりに
サスペンスやサイコホラー系のゲームが好きな方には特におすすめしたい作品です。
今後、全体的に登場人物をもう少し掘り下げた内容や、後日談のDLCが追加されたら嬉しいと感じるゲームでした。
最後までお読み下さりありがとうございました。