今回はChild-Dream様によるサスペンスADVゲーム「ANGEL WHISPER」のレビューをしたいと思います。
この記事では、「由島の決断・失踪理由・アンゴルモアとは何か」などについて私なりに解釈・考察しているので、気になった方はぜひ読んでみて下さい!
原作版との比較も入れつつ、ストーリーの考察などはリメイク版を前提として紹介したいと思います。
●リアリティが高いサスペンス系のADVゲームが好きな人
●このゲームの評価や人ストーリーの考察を知りたい人
●「ANGEL WHISPER」の原作版とリメイク版の違いを知りたい人
ちなみにChild-Dream様が制作されている「人形の傷跡」というADVゲームも大変おすすめです。
「人形の傷跡」の感想・レビューはこちら
※この記事はゲームのネタバレを含みますのでご注意下さい。
「ANGEL WHISPER」あらすじ
1999年にゲームデザイナーの由島博昭は「ANGEL WHISPER」という1本のゲームを遺して突然失踪した。「ANGEL WHISPER」には1998年に由島が実際に体験した出来事が綴られており、彼はレムソフトというゲーム会社でノストラダムスの大予言を題材にしたゲームの制作に携わっていた。制作過程で由島は不可解な事件に巻き込まれ、最終的に姿を消してしまう。そして2023年になり由島博昭の娘「由島美瀬」から、彼の失踪の真実を明かして欲しいという依頼があった。由島はなぜ「ANGEL WHISPER」を遺して消えたのだろうか…?
★原作版では、由島博昭の元恋人である今井田咲子が「ANGEL WHISPER」が添付されたメールを受信した後に彼の死を直接目撃しています。一方、リメイク版では由島はあくまで「失踪」しただけで生死は不明です。由島の娘である美瀬もリメイク版で初登場した人物です。
「ANGEL WHISPER」は何でプレイできる?
このゲームはスマホアプリでプレイ可能ですが、2023年9月28日にNintendo Switch版が発売されました。
Switch(定価1.500円)
iOS
ANGEL WHISPER 【アドベンチャーゲーム】 on the App Store
ゲームの特徴・評価
由島博昭の遺作をプレイし彼の体験から失踪の真相に迫るゲーム
・ゲームのプレイ時間は5~6時間程度。
・エンディングは分岐なしの1種類。
・リメイク版では由島美瀬によるエピローグが追加されている。
・実在するwebサイトに隠された情報も利用して攻略を進める。
・「ANGEL WHISPER」をプレイする中で、由島が自ら姿を消した理由を探る。
刷新された美麗なグラフィック
リメイク版ではキャラクターデザインやスチルなどグラフィックスが刷新されています。駅や街の背景が原作よりもさらにリアルになったことで、まるで現実世界で事件が起きているかのように感じました。鮮明なグラフィックにより、由島が見る不思議な夢の神秘的な様子や、ヨハネの使徒と対峙した際の不穏な空気が身近に感じられ、プレーヤーの没入感を高めてくれます。
またゲーム中で閲覧できる実在のwebサイト(由島の個人ページ)に記載されている情報も活用して攻略するというシステムが、ゲーム世界と現実世界が繋がっているような感覚にさせてくれます。
攻略において便利なヒント機能
リメイク版ではマップが見やすくなっており、ヒント機能が追加されています。原作版では、登場人物のセリフや状況だけでは次に向かう場所や取るべき行動がわかりづらい場面も多かったのですが、ヒント機能を使用すると由島が次に行きたい場所などを呟いてくれるため、攻略がかなりスムーズに進むようになりました。さらに、原作版の時に欲しいと感じていたログ機能も追加されており、ゲーム内で理解が難しい用語が出た際に読み返せるのは非常に便利です。
「ANGEL WHISPER」ストーリーの考察
レムソフトでは、1999年7月に恐怖の大王アンゴルモアが降ってきて人類が滅びるという「ノストラダムスの大予言」を題材にしたゲーム「アンゴルモア」が開発されていました。しかし「アンゴルモア」はただのゲームではなく「見た者の遺伝子を変化させ、人類の文明を閉じる方向に人間を導く力」があるメディアでした。それを踏まえて、いくつか考察してみたいと思います。
<考察していく内容>
①最後に由島が下した決断と失踪した理由について
②なぜアンゴルモアの真のタイトルがANGEL WHISPERなのか
③ヨハネはどこまで由島の行動を想定していたのか
由島の決断と失踪の理由
なぜ由島はゲームを遺して消えたのでしょうか?それはヨハネに背いて人類の文明を存続させるためです。驚くべきことに、由島がアンゴルモアに対抗するために作り出したANGEL WHISPERはアンゴルモアと同じであり、「人類を救う=人類の文明を自ら閉じて滅亡に向かうこと」でした。「滅亡を阻止する」という由島たちにとっての救いと、ヨハネにとっての救いは異なる方向を向いていたのです。
由島自身、自分が新しい時代を作る創造主に選ばれたことや自分が愛するゲームという媒体が使用されることには純粋な喜びを感じていました。一方で、今まで自分や自分の仲間たちが築き上げてきたものを滅ぼしたくない気持ちも強く、「自分の考える救いを押し通してヨハネに背くこと」に対して大きな葛藤を抱えていたはずです。最終的に由島は「ANGEL WHISPER」に遺伝子改変プログラムを入れずに咲子に託すという決断をしました。改変プログラムをゲームと共に送ったのは、由島自身も自分の決断に自信がなく、ヨハネに背いたことが人類にとって間違いだった時のための保険でしょう。
由島がヨハネに背いた代償として、由島と彼の大事な人間が制裁を受けないために自分がヨハネの管轄外の存在になるしかなかった=「この世界からの消失」だったのでしょう。個人的には、由島はヨハネの管理下にない概念のようなものになったのではないかと考えています。
なぜ「アンゴルモア」=「ANGEL WHISPER」なのか?
ストーリー終盤では、「1999年8月より、インターネット上に出現した『アンゴルモア』と呼ばれたソフトウェアの真のタイトル」が「ANGEL WHISPER」であることがわかります。この内容に「なぜ?」と驚いた人もいるのではないでしょうか。
まず、レムソフトが開発を中止した「アンゴルモア(レムソフト開発)」とヨハネが言う「アンゴルモア」は別物だと思われます。その理由はヨハネからのいくつかのメッセージです。
だからこそ、意識改革のための
ソフトウェアが必要なのだ。それはその時代の人間が創らないといけない。
そして、選ばれた人間こそ貴方だった。「アンゴルモア」とは見た者の遺伝子を変化させて、
文明を閉じる方向に人間を導くメディアなのだ。引用元:「ANGEL WHISPER」ゲーム内ヨハネのセリフ
由島、あなたこそが選ばれた人。
真のクリエイターなのです。見た者の遺伝子を改変するコードをお送りしました。
それをゲームに入れこめば、アンゴルモアは完成します。引用元:「ANGEL WHISPER」ゲーム内ヨハネのセリフ
このメッセージからは、あくまで「アンゴルモア」は人類の文明を終焉に導く媒体を指す言葉であり、ヨハネの技術である「遺伝子改変プログラム」が入ったものは全て「アンゴルモア」と呼ばれることが伺えます。そして、この時代にヨハネによって選ばれた創り手の創作物+ヨハネの技術でアンゴルモアが完成することから、「アンゴルモア」=「ANGEL WHISPER(+遺伝子改変プログラム)」なのではないでしょうか。そのため、もし「アンゴルモア(レムソフト開発)」がルナティクスではなく由島主導で制作されたゲームだったなら、「アンゴルモア(レムソフト開発)」も遺伝子改変プログラムの付与と共に真の「アンゴルモア」になっていたかもしれません。
由島に対するヨハネの思惑
由島がヨハネに逆らって失踪するところまで予測していたかは不明ですが、少なくともヨハネは由島が「アンゴルモア(レムソフト開発)」のリリースを阻止し、別のゲームを自身の手で制作するところまでは想定していた、もしくはヨハネの筋書きだったのではないかと私は推測しています。
※ここからは、筆者の勝手な推測になりますので根拠は薄いです。
そう考える理由は、ストーリー内でヨハネが語った内容にあります。
<ヨハネが語る内容からわかること>
・人類が自ら滅亡に向かうという考え方は普通なら到底受け入れ難いはず。
・たとえ受け入れがたくても、種としての立場を考えて人類自ら文明を閉じるようにして欲しい。
・ヨハネに選ばれた創り手によって制作されたものが最終的に「アンゴルモア」になる資格を持つ。
そもそも由島が直接制作に関わることができなかった「アンゴルモア(レムソフト開発)」では真の「アンゴルモア」になる資格がありません。ヨハネは由島に別のゲームを創らせて真の「アンゴルモア」を完成させる必要があり、そのきっかけをヨハネは与えていたのではないでしょうか。
<由島に起こった一連の出来事>
①由島が「アンゴルモア(レムソフト開発)」に関する事件を追い、仲間と共に危険な目に遭う。
↓
②人類と文明の滅亡を受け入れられない由島が、仲間の犠牲やリリースの阻止を経て「アンゴルモアに対抗するゲーム(ANGEL WHISPER)」を創り上げる。
↓
③人類滅亡に反対した由島も最後はヨハネの意見を受け入れて、自ら「ANGEL WHISPER」に遺伝子改変プログラムを入れる。※実際は達成ならず。
最終的に由島はヨハネを裏切って失踪したため③は達成されませんでしたが、上記のような、由島に起こった一連の出来事が全てヨハネの筋書きだったとしたら恐ろしいですね。
おわりに
個人的な考察が多くなりましたが、少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。
キーワードの意味やストーリー全体の理解が難しい部分もありますが、壮大なテーマと現実世界で本当に起きた出来事かのようなリアリティが魅力的なゲームです。気になった方はプレイしてみて下さい。
最後までお読み下さりありがとうございました。