はことふね

主にゲームのレビューや考察をしています。

MENU

【雨にして人を外れ】レビュー・ストーリー考察/ミステリアスな雰囲気が魅力のノベルゲーム

※本ページにはプロモーションが含まれている場合があります。

今回はD10RAMA様によるビジュアルノベルゲーム「雨にして人を外れ」のレビューとストーリーの考察を紹介します。このゲームはミステリアスな雰囲気が特徴的なノベルゲームです。

この記事はこんな人におすすめ!

●ミステリアスな雰囲気のあるノベルゲームを探している人

●「雨にして人を外れ」の感想やゲーム評価を知りたい人

●このゲームを既にプレイした上で、他のプレーヤーの考察を見たい人

※この記事はゲームのネタバレを含みますのでご注意下さい。

「雨にして人を外れ」あらすじ

主人公で高校生の下地春也は一つ上の先輩「赤羽雪乃」と出会い文芸部に所属する。掴みどころがない上に色々と奇妙な言動をする雪乃との日々を過ごしていく中で、世間を騒がせている連続殺人事件と雪乃との関わりや雪乃の真実に春也は触れてしまうことになる。雪乃が抱える秘密を知った時、選択を迫られた春也は一体どのような未来を選ぶのだろうか…?

「雨にして人を外れ」は何でプレイできる?

このゲームはノベルゲームコレクション・Steam・Freemでプレイすることが可能です。

ノベルゲームコレクション

Steam

Steam:雨にして人を外れ

Freem!

雨にして人を外れ:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!]

ゲームの特徴・評価

操作感・特徴

・プレイ時間は1時間~1時間半度
・エンディングは2種類あり、選択肢によって分岐する。
・エンディング到達後は好きな章のみを選択して再度読むことができたり、一枚絵を閲覧できる画廊などのおまけ要素がある。

ゲーム評価

◆良かったところ◆
・背景・登場人物のイラスト・文字フォント・BGMなど全ての要素が一つも世界観を壊すことなく合わさっている。

 

◆少し気になったところ◆
・禁忌の愛がテーマになっているため賛否が分かれやすい

エンディングについて

「雨にして人を外れ」には2種類のエンディングがあります。

エンディングA

春也は雪乃と別れることになったとしても変わらず生きていくと伝えます。本当は雪乃と離れたくないものの、元の世界に帰らなければならないという雪乃の覚悟を尊重しています。雪乃は異界に帰り、春也も含めた全ての人間の記憶からその存在は消えてしまいます。雪乃がいなくなると雨がやみ、ずっとモノクロだった世界がカラーの世界へと変わります

エンディングB

春也は雪乃と絶対に離れたくないことを伝え、二人は最後に文芸部の部室で過ごします。おそらく春也は雪乃に食べられてしまい、その後雪乃は異界からの刺客に捕まったと考えられます。救いが無い感じもしますが、「死んでも離れたくない」という春也の願いは叶いましたし、雪乃も春也と最後まで一緒にいることができたため、二人にとって幸せな結末だったのではないでしょうか。

ストーリーの見どころ

物語において「春也と雪乃が迎える結末をどう捉えるのか」が一番の見どころであり、どちらのエンディングが2人にとってより幸せなのかについては考察のしがいがありそうです。
たとえ禁忌で救いが無いとしても、私はBのエンディングこそ2人の願いが叶う唯一の方法だったと考えています。

春也と雪乃、それぞれの想い

春也は人と関わることが苦手で人の中に馴染めない部分があり、雪乃も妖であるが故に人との距離感をうまく掴めずにいました。対人関係において似たような部分があったために春也は雪乃に惹かれ、信頼感を持ったり彼女に付いていきたいと感じたのでしょう。

春也は雪乃の存在を「特別」だと思っており、雪乃の正体が妖であっても動じず、この世界で食人という罪を犯していてもその気持ちは変わりませんでした。どんな背景や事情があったとしても、自分を受け入れてくれた相手の存在をただ無条件に肯定したいという気持ちがあったのだと思います。

雪乃は自分の置かれた環境が孤独で窮屈だと感じたからこそ、人間界という外の世界を知ることを止められませんでした。そしてそこで春也という、奇妙で人間ですらない自分を受け入れてくれた上に好意まで持ってくれる存在に出会ってしまい嬉しくて仕方なかったのだと思います。だからたとえ自分のしていることが禁忌でも、春也がずっと一緒にいられない相手だとわかっていても、春也と最後まで一緒にいたいと強く願ったのでしょう。お互いにとって、相手だけが自分を認めてくれる存在だと感じていたのかもしれません。

二人にとっての「幸せ」

二人は決して結ばれることのない関係性です。雪乃は食人という許されない行為と犠牲の上に成り立つ存在であり、本来交わってはいけないはずの相手に惹かれ一緒にいたいと願った春也は雪乃と共に破滅に繋がっていくだけです。

エンディングにおける背景色も対照的で、雪乃が異界へと帰ると背景がカラーへと変わるのに対し二人でいることを選んだ場合はモノクロのまま変わらず、一緒にいても二人に明るい未来がないことを暗示しているような気がします。そのため春也は客観的に見ると雪乃を異界に返し、雪乃の存在が記憶から消えて日常に戻っていく方が明らかに良い結末なのですが、彼にとってそれが必ずしも幸せとは限りません。これから先、雪乃がいない日々を過ごしていくよりも、たとえ未来はなくても雪乃と短い時間を共に過ごす方が春也にとっては幸せで、「悔いなく今を生きた」と言い切れるのは最後まで雪乃と一緒にいることのような気がします。雪乃も、どうせ異界に帰って裁かれるなら春也と共に過ごし、春也を食べることで物理的に彼と「一緒に」なれる方が心置きなく裁きを受け入れることができるのではないでしょうか。

第三者からは人の道を外れており絶望にしか見えないものでも、当人たちにとってはそうではないのかもしれません。

思い出のあじさい園

春也と雪乃の思い出の場所として何度かあじさい園が登場するのですが、なぜ「あじさい」なのかを考えてみました。ゲーム内では「青色・紫色・桃色」のあじさいが出てきます。あじさいは色によって花言葉が異なり、青色と紫色のあじさいの花言葉は「神秘的」です。これは、特に華羽白逝姫としての雪乃の雰囲気と合っています。さらに桃色のあじさいには「強い愛情」という花言葉があり、禁忌でありながらも強い想いで結ばれた二人の関係性を象徴しているように見えます。あじさいが二人の思い出となっているのは、雨の時期に似合うからというだけではなく、花言葉の意味も関係していると私は勝手に推測しています。

おわりに

ストーリーそのものはあまり長くありませんが非常に引き込まれる内容で、読み終わった後は何とも言えない切なさが残りました。
テーマは賛否両論あるかもしれませんが、心の中に非常に刺さるものがあり個人的には好きな世界観です。気になった方はぜひプレイしてみて下さい。

 

最後までお読み下さりありがとうございました。