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【ナツノカナタ】ゲームレビュー・感想/終末世界で生きる少女の物語

※本ページにはプロモーションが含まれている場合があります。

今回はKazuhide Oka様による「ナツノカナタ」のレビューや見どころを紹介していきます。このゲームは探索ありのテキストアドベンチャーゲームです。

「画像の出典:ナツノカナタ公式サイト プレスキット https://natsuno-kanata.online/presskit/

この記事はこんな人におすすめ!

●美しくもディストピア系のストーリーに興味がある人

●1本の小説や映画を観たかのような重厚な物語をゲームで読みたい人

●「ナツノカナタ」の評価やストーリーの感想を知りたい人

この記事はゲームのネタバレ内容を含みますのでご注意下さい。

 

「ナツノカナタ」あらすじ

祖母が残した古いコンピューターを偶然見つけた主人公は、コンピューターを通して「ナツノ」という少女と会話をする。ナツノは突然のパンデミックで崩壊した世界で旅をしていた。しかし主人公のいる世界はパンデミックなど起こっていないため、ナツノのいる世界は別物だろう。彼女のいる世界は一体どこで、なぜ2人は通話できるのか。ナツノとの会話を通して、主人公は終末世界の謎に迫ることとなる。

「ナツノカナタ」は何でプレイできる?

このゲームはSteamにてプレイ可能です。

開発元:Kazuhide Oka

全体のレビュー:圧倒的に好評

ゲームの特徴・評価

旅をしながら終末世界の謎を解き明かしていくゲーム

NORMALモードとSTORYモードの選択、途中での切り替えが可能。

・STORYモードでは「探索パート」をスキップして物語のみを読むことができる。

・ゲームのプレイ時間は6時間~10時間

・エンディングは分岐なしの1種類。

・エンディング後は本編で未開放のエピソードを見ることが可能。

崩壊した世界をナツノと共に歩ける探索パート

NORMALモードの「探索パート」ではナツノと共に空き家となった建物などを探索して生活に役立つ物資の調達を行うことができます。この時、GameOverや探索の強制終了を避けるためにナツノの「体力」と「空腹度」というステータスの管理が必要です。プレーヤーは手に入れた武器名や回復アイテム名を直接文字として打ち込むことでナツノに使用させ、探索をサポートすることになります。さらに感染者と戦闘になることがあったり、ナツノが持ちきれない手荷物は預ける必要があるといった、サバイバルゲーム要素を楽しめるのも魅力です。「道具/料理一覧」やおにぎりなどの「クラフトレシピ一覧」というアイテムの収集要素もあります。

これらの探索パートはこのゲームの楽しみの1つですが、STORYモードに切り替えることで物語部分だけを読むことができるシステムは非常に良心的で素晴らしいです。

世界観により没入させてくれるBGMと会話システム

物語の序盤ではパンデミックで崩壊した世界の実態とは裏腹に和やかで明るめのBGMが流れており、その現実を当たり前のように受け入れてしまっているナツノの心理状態を表しているようにも、異常事態であっても時間は普通に流れていくという現実を表しているようにも思えました。そしてストーリーが進むにつれて崩壊した世界の状況を理解し始め、自分も感染しているかもしれないという恐怖・今後の不安などが膨らむにつれて物悲しい雰囲気のBGMへと変化していく様子が、より登場人物に感情移入する手助けになってくれます。

さらに、このゲームには実際に文字を打ってナツノを含めたキャラクターたちと会話が可能なシーンがいくつかあります。このシステムによって、実際に目の前に映るキャラクターと繋がり、物語の世界に一歩近付いているような感覚になります。

ストーリーの感想

存在意義・生きる理由を問う

この作品で最も気になるのが、ナツノが過ごしている世界の正体となぜパンデミックの起きていない世界の主人公がコンピューターを通してナツノと会話ができるのか?です。

ナツノのいる世界は実は仮想世界で、コンピューターを遺した主人公の祖母が過去に創り出したものでした。もし、自分の住む世界が誰かに創られた仮想の空間だと知らされたら、きっと創造した人のことを知りたいと考えると思います。そしてナツノと同じように祖母がこの世界を作った背景が必ずあるはずだと思い、自分の存在理由について色々と想像を巡らせてみるはずです。

しかし実際はナツノのいる世界が創られたことに意味はなく、祖母の興味本位から生まれた空間でした。ナツノのいる世界も存在する人々も特に深い理由なく誕生し、主人公はコンピューターを通してその仮想世界にアクセスできているだけだったのです。

私たちも、世の中で起こる理不尽なこと・自分の存在や行動などに理由を付けたり意味を見出したりしたくなることが多々あると思いますが、実際はただその事実だけが存在するということもあるのではないでしょうか。でもだからこそその中で精一杯生きていくこと、存在や行動の理由を自ら作り出すことの大切さを伝えられているような気持ちになりました。

他者との繋がり

真実を知ったナツノはいっそ、自分のいる仮想世界を削除してしまおうかとも考えます。しかし最後は世界を消すことをやめ、理不尽で理由なんてない世界の中であてもない旅をして生きていこうと決意します。

もしも気まぐれに創られた仮想世界で生きていくのをやめ、感染が広がりどうしようもなくなった世界を削除することを選択したとしても決して間違いではないでしょう。それでも偶然から生まれた世界にも何かを見出すことができると感じ、創られた理由も意味も無い現実を受け入れて前に進んでいくナツノの姿と強さに心を打たれました。

ナツノが仮想世界を消さなかった理由はきっと、寂しさや他者との繋がりにあるはずです。「寂しさに感染すること」を恐れて一時は外の世界にいる主人公との関わりを絶った彼女ですが、やはり心のどこかでは主人公との繋がりを求めていたんだと思います。荒廃した世界で1人彷徨う時、話し相手という形で側にいてくれた主人公の存在は大きかったはずです。少なくとも主人公との間に出来た偶然の繋がりに心の支えという意味を見出せたからこそ、これから生きていく時間にも同じようなものを見つけられるとナツノは信じることができたのではないでしょうか。

おわりに

崩壊した世界というディストピア系の世界観かつ最終的に明確な救いがあるわけではないというストーリーが、むしろヒロインのたくましさや現実の厳しさを際立たせてくれるような素敵な作品です。長編ですが1度読み始めたら思わずのめり込んでしまう人が多いのではないでしょうか。

 

最後までお読み下さりありがとうございました。