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【透明人間になれたなら】レビュー・ストーリーの感想/祥が望んだものは…?

今回はニケ様による「透明人間になれたなら」のレビュー・ストーリーの感想を紹介していきます。このゲームはコメディ要素ありの恋愛系ノベルゲームです。

この記事はこんな人におすすめ!

●コメディ要素も恋愛要素もあるゲームに興味がある人

●最後に胸が熱くなるような感動があるノベルゲームをプレイしたい人

●「透明人間になれたなら」の評価やストーリーの感想を知りたい人

ちなみにニケ様が制作されている「キミのニセモノに恋をする」というノベルゲームも大変おすすめです。

「キミのニセモノに恋をする」の感想・レビューはこちら

※この記事はゲームのネタバレを含みますのでご注意下さい。

 

「透明人間になれたなら」あらすじ

主人公「宇都宮祥」は博士として「透明人間になれる薬」の開発に成功した。祥の願いは大好きなあの子の……を見ることだ。もし透明人間になれるなら、あなたは何を望むだろうか?

「透明人間になれたなら」は何でプレイできる?

このゲームはノベルゲームコレクションでプレイ可能です。

ゲームの特徴・評価

・ゲームのプレイ時間は30分程度。

・エンディングは全7種類。(TRUE END 1種類・BAD END 6種類)

・コメディ要素があるがゆえにその裏に隠されたシリアスな過去や悲しみがより引き立ち、次の展開が非常に気になってしまう構成になっている。

・真エンディング後に流れる映像は、主人公の必死に悩んだ感情が読み手に突き刺さるようなインパクトがある。

「透明人間になれたなら」ストーリーの感想

コメディ要素とシリアスな要素の対比

序盤はコメディ要素が強く、祥と出会った少年や女性に透明になる薬を使わせないために祥が語る理論がとにかく面白くてシュールな展開ですが途中から主人公のシリアスな回想シーンが織り交ざり、祥の過去に一体何があったのか、どのようにストーリーが続いていくのかが非常に気になってしまう構成になっています。

祥がもし透明人間になれたらやりたいことである「大好きな女の子のあられもない姿を見ること」は、字面は下心に満ちた願望のようにしか見えません。しかしストーリーの最後にそれが「自分の好きな幸が嬉し泣きする姿を見たい」という願いだったこと、そう思うに至った祥の過去を知った時、「そういうことだったのか」と納得すると同時に感動せずにはいられません。

幸が交通事故で両親を亡くした時に実感が無さ過ぎて涙も出ず無感情であったことや、その後祖父母を亡くし親戚に引き取られた時から、ふさぎ込んで感情をほとんど表に出さなくなっていました。祥の願いは、幸に笑うこと・泣くことを含めた心からの感情表現がまた出来るようになって欲しい、素直に自分の気持ちを表に出した姿をさらけ出して欲しいという気持ちから来たものだと思います。

約束を果たした祥の深すぎる想い

幸が命を絶ったのは両親と祖父母が立て続けに亡くなり、自分が周囲の人間を不幸にするのではないかと悩んでいた時に、祥が交通事故に遭ったことがとどめを刺してしまったからではないでしょうか。彼女の「透明人間になって誰からも視えなくなりたい」という願いはあまりにも切実で、幸の生前は近くにいた祥でさえ寄り添うことはできませんでした。

幸が亡くなった後、透明になってこの世界から消えてしまいたいと強く願った彼女の苦しみや悲しみを理解するために祥が考え抜いた結果が「自分も透明人間になる方法を探すこと」「透明になった幸と同じ存在になること」だというのは、普通の人間にはなかなか無い発想です。そして幸の生前に何気なく言った「透明人間になった幸を見つける」という約束を果たすために何十年という人生の歳月をかけて努力をし続けたことも、並の精神力や想いでは成し遂げられないことです。

祥と幸は異なる人間で、置かれた境遇も違うため祥が幸の気持ちを完璧に推し量ることはできなくても、相手に精一杯寄り添おうとしたその想いこそ非常に大事なのだと改めて考えさせられました。透明になった祥と会話できたことで、祥が人生をかけて成し遂げた行為と祥の深すぎる愛情が伝わり、最後の最後に幸はやっと救われたに違いありません。

2人の今後について

幸は透明人間になった祥と共にこれからも一緒に過ごすのでしょうか、それとも今まで彼女を縛り付けていた孤独や悲しみから解放されて消えていくのでしょうか。私は後者だと思います。彼女は死後、「透明になる」という願いを叶えても負の感情を持ったまま彷徨っていました。自分のために人生を捧げてまで約束を果たそうとしてくれた祥の気持ちに救われ、そのまま自然と消えて両親や祖父母の元に行ける方が彼女にとって良いはずです。

また、開発されたばかりで副作用などもわからない薬を飲んで透明人間になった祥の行く末も気になります。このまま以前と同様に生活できる保証が無いことや、開発した薬を許可なく自分が飲んでしまったことなど、解決すべき課題が多くある気がします。ただ、透明人間になった幸を必ず見つけるという長年の夢を無事に達成し、祥に思い残すことはもう無いように見えるため、案外どうにでもなるのかもしれません。

おわりに

主人公の言動などにコメディ要素が散りばめられているがゆえに、その裏に隠された深い悲しみや過去がより一層引き立って見えるようなストーリーのノベルゲームです。気になった方はぜひプレイしてみて下さい。

 

最後までお読み下さりありがとうございました。