今回はてるふぉん様による「瞼の裏の世界」のレビューとエンディングの考察を紹介していきます。こちらは2つの世界を切り替えながら進むホラーアドベンチャーゲームです。
●じわじわとした怖さのあるホラーゲームをプレイしたい人
●敵から追いかけられる要素のあるホラーゲームは苦手な人
●「瞼の裏の世界」の評価やストーリーの考察を知りたい人
※この記事はゲームのネタバレ内容を含みますのでご注意下さい。
「瞼の裏の世界」あらすじ
16歳の少女「シオン」は目を閉じれば空想の世界を見ることができる。彼女は嫌なことや辛いことを忘れるために「瞼の裏の世界」を見ることがあった。シオンはずっと「あるもの」を探している。彼女が探しているものは何なのか?果たして探しものは見つかるのだろうか?
「瞼の裏の世界」は何でプレイできる?
このゲームはふりーむ!にてプレイ可能です。
※プレイするためにはRPGツクールVX Ace RTPのダウンロードが必要になります。
ゲームの特徴・評価
2つの世界を切り替えつつ町を探索するホラーゲーム
・プレイ時間は30分程度。
・エンディングは分岐なしの1種類。
・キーボードの「A」キーを使って見える世界を切り替えながら探索を進める。
・指定された枚数のメモを集めると次のステージ進むことができる。
見ている世界の切り替えという斬新なギミック
このゲームは「普通の町が見える世界」と「血や肉塊だらけの赤みがかった町が見える世界」をAキーで切り替えながら探索していきます。ステージの攻略に必要なメモアイテムを見つけるために必要な切り替えシステムなのですが、それ以外にも「普通の町の世界」でシオンが会話している人物を「赤みがかった世界」で見てみると…なんと赤い肉塊になっています。シオンはずっとこの赤い肉塊と会話していたのか…?というゾワっとした恐怖を味わいながら探索を進めることができるギミックが面白いです。追いかけ要素も無いのでチェイスが苦手な人でも楽しめます。
音や派手な驚かし要素はないもののしっかりとしたホラーが味わえる
このゲームの攻略に謎解きは無いため探索難易度は高くありませんし、敵から追いかけられる要素も無いのでチェイスが苦手な人でも楽しめる仕様になっています。その分、大きな音や派手な脅かしによる怖がらせ要素は無いものの、映像や文字でしっかりと怖さが演出されています。
例えば「普通の町の世界」ではBGMがありませんが、「赤みがかった世界」に切り替えると静かで不穏なBGMが流れ始めます。さらにプレーヤーが行う「A」キーの切り替え1つで、目の前で話しているキャラクターが肉塊になったり、通れない道では肉塊の化け物のようなものが行く手を塞いでいることに気付いてしまいます。探索には世界の切り替えが必要なのに「A」キーを押すのが怖くてためらってしまう…といった、じわじわとした恐怖感をしっかり味わうことができます。
「瞼の裏の世界」エンディングの感想
それではこの作品のストーリーの簡単な解説および感想を書いていきます。
この世界の現実
シオンの住んでいる町の近くで細菌兵器が流出し、家族や町の人々は全員赤い肉塊へと変わってしまいました。シオンには偶然にも抗体物質が備わっており、彼女だけは肉塊に変わることなく無事でしたが、果たしてこれは運が良いのか悪いのかわかりません。珍しい抗体を持っていること自体は幸運ですが、結局自分だけが生き残る孤独・家族や知り合いたちの変わり果てた姿を見続ける苦しさは相当なものでしょう。
そして、その苦しみから逃れるためにシオンは空想の世界として「普通の町の世界」を作りそこに逃げていました。実は「A」キーで切り替えられる「赤みがかった世界」の方こそが現実の世界だったのです。
ストーリーは一日目から始まるのではなく、「三日目→二日目→一日目→四日目」の順番で進みます。スタートである三日目は普通の町が見えるのですが、一日目に戻るにつれて何故か「普通の町の世界」にも血が浸食しています。これは、細菌兵器の流出により崩壊した世界の恐ろしい記憶がシオンの頭にこびりついてなかなか離れず、空想の世界にも影響を及ぼしていたからだと考えられます。
シオンの探しもの
シオンが町をひたすら探索している目的は「あるもの」を探すことで、その探し物は「楽に死ぬことができる薬」でした。ですがそれはあくまでシオンの空想の世界として作り出された「普通の町の世界」の中の名称です。そして「楽に死ぬことができる薬」を手に入れる四日目のステージではシオンがもはや現実の世界の地獄に耐えられず、「A」キーで「赤みがかった世界」に切り替えることができなくなります。
シオンは空想の世界で手に入れた薬を空想の世界の中で使いますが、それはすなわち現実世界の中での死も意味していると思います。シオンは空想の世界で「楽に死ぬことができる薬」と称して自分自身を騙しており、現実世界で実際に使った道具は不明ですが、効果音から考えるに刃物を使用した壮絶な最期だったのではないかと私は推測しています。それでもシオンにとってはそれが唯一の救いであったと想像できるだけに、責めることもできず何とも言えない気持ちになりました。
おわりに
じわじわと襲ってくるような怖さがあるホラーゲームというだけでなく、シオンが置かれた絶望的な状況と心情は想像すると心にくるものがあります。30分程度で気軽に遊べる作品ですので、気になった方はぜひプレイしてみて下さい。
最後までお読み下さりありがとうございました。