今回は、橙々様が制作された『アクアリウムは踊らない』のネタバレありのレビューと考察を書いていきたいと思います。
この作品は既に前編がふりーむにて公開されていた作品でしたが、2024年2月15日に後編も含めた「完全版」がsteamにて公開されました!
※この記事はゲームのネタバレを含みますので未プレイの方はご注意下さい※
前編公開時との比較や、前編プレイ時に筆者が考察した内容がどのくらい当たっていたのか?の答え合わせ、追加の考察なども本記事で紹介していきますのでぜひ最後までご覧下さい!
参考:前編公開時に筆者が行った考察記事はこちら↓
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- 『アクアリウムは踊らない』あらすじ
- 『アクアリウムは踊らない』ゲーム情報
- ゲームの特徴・評価
- 『アクアリウムは踊らない』ストーリー考察の答え合わせ
- 『アクアリウムは踊らない』ストーリーの追加考察
- おわりに
『アクアリウムは踊らない』あらすじ
主人公スーズは入院患者の少年からプレミアムチケットをもらい、幼馴染のルルとビアンカ水族館に行くことになった。館長の妻であるクリスの案内付きで水族館を楽しむことになるスーズだが、途中で突然ルルは行方不明になってしまった。レトロと名乗る謎の人物や少女キティたちと出会いつつ、スーズは水族館の出口を必死に探す。果たして無事にルルを見つけ出し、水族館から脱出することはできるのだろうか?
▼スーズがもらったビアンカ水族館のプレミアムチケット
※画像は製作者様公式サイトのサムネイル用素材集からお借りしております。
(URL: https://daidai7742.wixsite.com/aqua-dance/blank)
『アクアリウムは踊らない』ゲーム情報
ジャンル:ホラーアドベンチャー
制作者:橙々
プレイ時間:5時間~6時間程度(全エンディングを回収する場合はもっとかかる)
エンディング:5種類(TRUE ENDが1種類とのこと)
▼このゲームはsteamにてプレイ可能。(2024年2月時点)
ゲームの特徴・評価
完全版では既存のストーリーや謎解きにも一部変更があった
既存のトリックも含めて本作品の謎解きに関してはやや難易度が下がったような印象がある。前編公開時には難易度のかなり高いトリックもあったため、謎解きが得意でない人も挑戦しやすくなったのではないだろうか。
だが一方でホラー演出や落下ダメージのシステムが追加された。床に穴が空いたステージや氷のステージでのゲームオーバー要素が増えチェイス難易度が上がることで、全体としては非常にやりごたえのある作品となっている。
幻想的な世界と不気味な世界の対比を楽しむことができる
ビアンカ水族館や不思議な空間で流れているBGMやクリック時の水音は美しく幻想的だ。物語序盤はホラー感が無く、水族館を本当に楽しく巡っているかのような気分にさせてくれる。しかし途中からは血文字が突然壁に現れたり、水槽の水も含めて血のように赤い世界が広がるホラー演出・大きな電話の着信音・不気味なBGMなどが出てくることで一気に世界観が変わる。この世界観の対比がよりプレーヤーの恐怖感を高めてくれる。
5種類のエンディング回収というやり込み要素も抜群
本作品はエンディングが5種類あり、その中に真エンディングが1つあるとのこと。
何となく分岐しそうな予測がつきやすいところもあるが特に真エンディングを回収するのはかなり難しい。実際、筆者も真エンディングと思われる結末に辿り着くまでかなり試行錯誤した。全てのエンディングを回収するのは非常に大変だがその分尋常じゃない達成感を得ることができるだろう。
エンディングを見ると、ゲーム内で閲覧できる細かい情報や資料に数多くの重要な伏線が張られていたことが理解でき、丁寧に作り込まれた作品であることがよくわかる。
『アクアリウムは踊らない』ストーリー考察の答え合わせ
前編のみ公開時に別の記事にてストーリーの考察をしていたため、完全版のプレイ後にその答え合わせをしていこうと思う。
①水族館の生き物は元人間なのではないか?
こちらはおおむね当たっていたように思う。ビアンカ水族館をから迷い込むことのできるこの世界には「クリーピー」という生物がおり、不思議な空間に迷い込んだ者は時間の経過と共にクリーピーになってしまい、人間だった頃の記憶を失ってしまうという。完全にクリーピーになると人間に戻れず進行を遅らせることは不可な上に、クリーピーになる前にこの空間から脱出するしか解決策が無いため、不思議な空間にいた水生生物はほぼ迷い込んだ元人間だと考えて良いのではないだろうか?(ただし現実世界に存在するビアンカ水族館の生き物は普通の海洋生物で、クリーピーは基本的に不思議な空間の方で生活しているかもしれないが)
ちなみに筆者はスーズのみがクラゲ(水生生物)になる素質があると考えていたが、スーズだけでなくルルは魚・キティはタツノオトシゴのような生物になる素質があり、空間の力で全員にクリーピーとなる素質が与えられるというところまでは予想できていなかった。。
➁館長の妻クリスの黒幕説
こちらは半分当たっていたが半分外れていた、というべきだろうか。
結果から言うと確かにクリスは黒幕で、スーズたちをクリーピーにして水族館の仲間に加え、館長のために不思議な空間や水族館そのものを美しく賑やかにしようとしていた。そして館長の好きなクラゲになる素質を持つスーズには特に注目していた。
しかし驚くべきことに、「クリスは本物のクリスでは無かった」のだ。ゲーム中に出てくるのは「偽クリス」で本物の「館長の妻クリス」はシャチのクリーピーになっていた。偽クリスの正体は名も無き1匹のクリオネであり、深海の石の力で人間になり館長の妻クリスに成りすましていた。ちなみに館長は既に亡くなって白骨化しているのだが、偽クリスは彼がまだ生きているものとして扱い、骸に対して話しかけ続けている。
探索の道中に偽クリスが書いたと思われる日記があり、館長の体調が芳しくないことや部屋から出てきてくれないことを仄めかしていたが、館長が既に遺体になっていたのであれば納得できる内容だ。
③スーズにチケットをくれた少年の正体
こちらは筆者の考察が当たっており、スーズに水族館のチケットをくれた入院患者の少年はキティの弟「ニコ」だった。そしてニコがくれたチケットはもともとキティが弟と2人で水族館に行くために渡したものだったようだ。
ニコがスーズにチケットを渡してしまったのはキティが水族館の異世界に行ったことにより、一時的にニコの記憶からキティが消えていたからのようだ。
『アクアリウムは踊らない』ストーリーの追加考察
前編に引き続き完全版もプレイした上で、改めて本作品のストーリーについていくつか考察をしてみようと思う。
レトロの願いはどういうもの?
ビアンカ水族館の館長夫婦が狙われた時、レトロが深海の石に願った内容はどのように反映されたのだろうか?スーズとの会話からレトロの願いが「皆が幸せに生きていける世界が欲しい」だったことが推測できる。ただ、「皆が幸せになれる世界」というのは定義が曖昧だ。明確な答えが無い願いだったからこそ、その結果出来上がったのはスーズたちが迷い込んだ異世界だったのではないだろうか。
館長は既に亡くなっていて効果の対象外だったようだが、まだ生きていた本物のクリスはシャチのクリーピーになってしまった。この世界に迷い込んだ人間も取り込んでクリーピーにし、記憶も名前も奪い、偽りの幸せの中で皆で暮らそうというものだ。
実際ここで暮らすクリーピー達は人間の頃の記憶を失い幸せそうに暮らしているが、きっと偽クリスにとっては幸せな世界でも、レトロにとっては意図していなかった世界だったために、迷い込んだ人間を助けようとしていたのかもしれない。
探索をしていると、レトロが生み出したこの世界では多くの人間がクリーピーになってしまったことがわかるため、汽車でグソクムシが「レトロは大きな罪を犯した」と言っていたのも頷ける。
レトロやクリスたちはどうなったのか
真エンディングでは深海の石を壊すことになるため、おそらくビアンカ水族館から迷い込んだ不思議な世界は消滅してしまっただろう。現在のレトロも偽クリスも深海の石の力によって生み出された存在なのでこの世界が消滅した=彼女たちも消滅したと考えて良いはずだ。(特に懐中時計の石はレトロの魂と繋がっている)
さらにこの世界の消滅と共に、スーズの仲間になってくれたアシカ(元トイ)・デメキン・ダンボなどの存在も全員消えてしまったのではないだろうか。完全にクリーピー化しておらず、現実世界の記憶をある程度維持していたスーズ・ルル・キティの3人だけが海辺にいたのは、彼女たちしか現実に戻れなかったことを示しているのではないか。
レトロたちの消滅を止められなかったことはとても悲しいが、レトロが実は12年前にスーズを海で救ったホオジロザメだったことをスーズが知り、言葉を交わすことができたのは本当に良かったと思う。そして自身が生み出してしまった世界をようやく終わらせ、この世界に執着していたクリスの暴走を止めることができたことにレトロは安堵しているようにも見えた。
おわりに
・幻想的な雰囲気と不穏な世界観の混合する世界をゲームで楽しめる。
・ガッツリ探索と謎解きを楽しみたい人におすすめできる。
・考察しがいのある重厚なストーリーをホラーゲームで味わうことができる。
歯ごたえのある謎解き・緊張感が走るチェイスに加えて非常に考察しがいのあるストーリーと、プレーヤーがワクワクするような要素が満載のADVゲームです。
特に真エンディングは感動せずにはいられないストーリーですので、気になった方はぜひプレイしてみて下さい!
最後までお読み下さりありがとうございました。